コーヒーを楽しむ。週に三日は、コーヒーブレイク、四日はティーブレイクと決めて
いる。ブレイクする仕事はないが、恰好を付けてそう呼んでいる。
本当は、のべつくまなくというのが正しい。
コーヒーは、コロンビア、トラジャ、
エスプレッソ用粉を中心に、
ティーは、アッサム、ダージリン、アールグレイ、ウヴァ、デイ
ンプラ、特殊なものでキーモンなど、気分に応じて、
ストレートやミルクティーにして飲む。レモンティーはアイスの時に飲んだ
りする。
幼少の頃は、水や白湯、少し成長して祖母の淹れてくれるお茶、
働くようになって、コーヒーという外国のおしゃれな飲み物を飲
むようになった。
今では、さほど問題にされないインスタントコーヒー(最近のイ
ンスタントは美味しくなった)を有りがたく飲んだ。
いつの頃だろう、豆から抽出したコーヒーを飲むようになったの
は。淡い記憶が蘇るのは、大学を卒業して就職したとき、おしゃ
れな一期先輩(と言っても、年齢は私より一回りも下)が、職場
に
サイフォン(その時初めて知った)を持ち込み、三時のコーヒ
ーブレイクに出してくれたことだ。グラインダーで豆を挽くとき
に香り立つ匂いは、至福そのものであったような気がする。実験
器具のようなサイフォンから抽出されるコーヒーは、その過程に
おいても、香ばしい香りが職場一杯に広がり、コーヒーとはこん
なに香りのいい物なのかと認識したのだった。
淹れられたコーヒーは、得もいわれぬ香りと味わいがあった。こ
の先輩は、「○○さん、砂糖は淹れずに
ブラックで飲んでくださ
いね。本当のコーヒーの味はどうですか」と得意げに聴いてきた。
返す言葉も見つからず、ただ、黙々と、熱く香ばしいコーヒーを
啜った。
渋みや苦みの後のほのかな甘みを感じる事が出来るようになれた
のは、生豆を焙煎して貰って少量ずつ購入するようになってから
だと思う。初めの頃は、店主任せであったが、何年も通う中に店
主が「どうですか、そろそろ自分の味は定まりましたか」と、私
の好みを聞いてくれた。その店主は、生豆の産地や、特徴や農園
など丁寧に説明し、私の好みの豆を好みの具合に焙煎してくれた。
それ以来、豆の購入は、そこと定め足繁く通ったが、足腰の弱り
もあって、最近はそこを訪れていない。
この文章を書きながら、私は、豆コーヒーを飲んだのは、このと
きが初めてでないのを思い出した。家庭の事情から高校を中退し、
船会社に勤めたとき、確かパーコレーターで淹れたコーヒーを飲
んでいた記憶が蘇ってきた。今思うと、その味はきっとMJBだ
と思う。
大学を卒業して就職し、コーヒーとの衝撃的な出会いをしたあと、
コーヒー愛好会を作り、パーコレーターを購入し、コーヒーが常
時そこにあるようになったとき使ったMJBの味は、船会社時代
に飲みつけた味だった。
私の、器具遍歴は、大卒後の職場での豆コーヒー体験の時から始
まった。今私はパーコレーターを除く殆どの器具を持っている。
今常時使っているのは、
エスプレッソマシーン2台と6万円もは
たいて買った水出しの
セットである。
マシーンの一台はポッド専
用、もう一台は粉専用のものでポッドも使える。
一応は、コーヒーブレイクを決めてはいるが、コーヒーで眠れな
くなることはないので、夜となく昼となく飲んでいる。最近は焙
煎をしてくれる処から豆を購入していない。車もないので、そこ
までたどり着くのが大変である。近くの
デパートから、出来るだ
け新鮮なコーヒーを購入して、1〜2杯分ずつ豆を挽く。軽快に
弾ける豆の音と、立ち昇る香りを楽しむために、手挽きのミルを
使う。水は還元水を使っている。器具は気分によって、
ペーパードリップ、ネルドリップ、プレス、サイフォン、マシーンを使い
分けている。
「コーヒーを楽しむ」と名辞したが、実は、喫茶店でコーヒーを
飲むのが、勿体ないだけのことである。コーヒー一杯に400円
払うより、豆100グラムを買った方が経済的だ。年金生活では、
一杯のコーヒーに4〜500円は、払えない。これが「・・・楽しむ」
の本心である。
喫茶店独特の雰囲気を楽しむことは出来なくなったが、家でそれ
なりの雰囲気作りをしている。

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